父の車

父は魚屋で働いている。
朝早くから自分の車を飛ばして遠くの職場に通っている。
もう定年は近いが手取りは同年代と比べても低いのだろう。
父の車は母が乗りつぶしたものをお下がりでもらったものだ。

昔は父にも羽振りがいい時があった。
クラウンに乗って当時高校生だった私をよく迎えに来てくれたものだった。
クラウンに乗っている父はどこか誇らしげであった。
周りから見れば金持ちに見えたのかもしれない。
実際に車を見て金持ちだねと言われたこともあった。
しかし、クラウンは手放すことになった。
元々父の会社から借りていた車だったので、返すことになったのだ。
その後、父は自分で購入した軽自動車に乗ることになった。
父の運転はクラウンの時と変わらず荒かった。
軽自動車に乗っているのにガンガンふかすし、前の車を煽るし。
荒い運転をされた軽自動車はどんどん傷んで、ついには廃車になった。

父にはお金がなかった。
廃車になったところで新しい車なんて買えなかった。
だから母が乗っていた車をお下がりでもらうことになったのだ。
しかし、父の運転は変わらなかった。
前回軽自動車を荒い運転で廃車にしてしまったことに自分で気付いていないのだ。
またしても父は荒い運転をして車をダメにしてしまった。

家族が、運転が荒い、もっと安全運転をしろと言っても聞かない。
自分は運転がうまい、運転は荒くないと思っているのだ。

父は今回は自分で車を買う羽目になった。
幼馴染で車屋の友達に頼んでローンを組んだのだ。

今度こそ廃車にならないことを願わずにはいられない。”